Story

ジョン・パトリック・シャンリィについて

1950年10月13日、ニューヨークのイースト・ブロンクス生まれ。父母ともアイルランド移 民で父は食肉業者、母は電話交換手。学校生活にはあまり馴染まなかった。ニューヨーク 大学へ進学、途中二年間の海軍生活を経て、教育演劇学を学び、総代として卒業。イギリ スへの演劇留学を断り、バーテン職につく。以後様々な職を転々とする。初めは詩人であ ったが、その後劇作家としてオフ・ブロードウェイで数々の戯曲を発表。殺伐とした都会 に生きる孤独で傷つきやすい人々を暖かいまなざしで描く。代表作は『お月さまへようこ そ』『ダニー・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー』『ウィメン・オブ・マンハッタン 』等。映画の脚本家としては『ジョー・ヴァーサス・ザ・ヴォルケイノー』(映画監督・ 脚本)『月の輝く夜に』(アカデミー脚本賞)等。





短篇集『お月さまへようこそ』(原題Welcome to the Moon)について

1982年初演。各短篇は独立した話ではあるが、同じテーマを持っている。それは本来孤独 な人間同士がふれ合い、心を通わせた時の喜びであり、それが達成できない時の悲しさで ある。また「人間と宇宙のつながり」というのも大きなテーマになっているが、シャンリ ィ作品では総じて宇宙、月、星、惑星等が人間の行動や運命を変えてしまうほど、大事な 要素になっている。彼の家があった場所は主にイタリアとアイルランド移民の住む地域で 、レンガ造りの建物は大体が5階建て。家で使う炭のせいでレンガは黒ずみ、全体に薄汚 れた、暗い印象を与えていた。しかし、建物が低層なので、頭上には大きな空が広がって いた。昼には太陽を眺め、夜には月や星を見つめて育ったシャンリィは、その美しさと果 てしない広がりに圧倒された。自分が何かに悩んだり、迷ったりした時には、空を見上げ た。すると自分が宇宙の塵より小さな存在であることを思い知らされ、その悩みなどは取 るに足らないほど、ちっぽけな物に感じられてしまった。少年時代の彼にとって月は「救 世主」であったとさえ言い切る。シャンリィ作品の根底に流れる、この「人間と宇宙の関 わり」という永久不変のテーマが彼の作品に普遍性を持たせている所以である。



本公演では、短篇集の中から4本を選び、改訳のうえ上演を行います。どうぞお楽しみに!

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